平成23年度 親委員会活動報告

地下空間研究委員会
                              幹事長 酒井 喜市郎

 本委員会は,平成6年度に土木学会に常設されて以来,地下空間利用における人間中心の視点に立ち,“地下空間学”の創造をめざす研究活動を行ってきました.その活動領域は,土木工学のみならず,都市計画,建築,法律,医学,心理学,福祉さらには芸術の分野にまで及んでいます.
 本委員会には「計画小委員会」「防災小委員会」「心理小委員会」「維持管理小委員会」の4つの小委員会を設置しています.各小委員会では親委員会で方向付けられた共通のテーマに基づいた活動計画を定め,その計画に基づき研究活動を精力的に行っています.また毎年初めに実施している地下空間シンポジウムを企画運営する「地下空間シンポジウム実行委員会」,地下空間シンポジウムに投稿された論文を審査する「地下空間シンポジウム表彰委員会」を別途設置しています.「地下空間シンポジウム」は今年で17回を数え,最新の地下に関する話題をテーマに,様々な分野の方々からの話題提供や論文発表を実施しています.
 また毎年行われている土木学会年次講演会では,研究討論会や共通セッションなどを通じて,広く委員会外の方々とも論文発表ならびに意見交換や討論を行っています.さらに地下に関連した災害,重大事件・事故への迅速な対応と,それに関する討論,報告書作成並びに公表,各団体からの受託研究への対応,さらにはテレビ局,出版社などのマスメディアへの積極的な協力を通じて,地下空間に関する様々な事柄を広く社会に発信しています.特に今年度は自然災害が多発しており,3月11 日に発生した東日本大震災による仙台地区地下空間調査,9月20 日に上陸した台風第15号による名古屋地方の地下を中心とした浸水被害調査を実施し,委員会内で報告すると共に本日の地下空間シンポジウムでも委員会特別報告として発信しております.
 平成23 年度は第6 期の初年度であり,東日本大震災後,防災に対する意識の高まりを反映させるために,平成22 年度までの研究活動をさらに発展させて各小委員会が個別に設定して実施する研究テーマの他に,各小委員会共同で研究をすすめる地下防災に関連した研究テーマも設定しています.これら研究は土木学会内部の活動に留まらず,各種団体が企画する研究助成への積極的な応募を通じ,幅広い研究活動を展開しています.
 今年度に実施した主な行事として,7月には平成19年度より毎年実施している,「街の地底探検 ~感じる 考える 地下空間利用~」をテーマとする第5 回「夏休み親子見学会」を東京,大阪で開催しました.この見学会は将来を担う小学生を対象とし,実際の地下の見学を通じて地下空間を肌で感じてもらった後,地下空間の利便性,問題点を洗い出し,地下空間が将来どのようになってほしいのかをクイズ形式で考えてもらう,参加型の見学会の形式を取っています.参加した小学生には「こども地下空間博士」認定証を贈り,将来にわたり幅広く地下空間への関心を持ち続けてもらいたいと思います.今後もこの活動は,その他の普及活動と共に委員会全体で取り組んで行きたいと考えております.8 月には第5 期と第6 期の研究委員会の新旧委員の引継会を開催し,第5 期の委員会活動の成果発表と第6期に向けた課題を各委員会で共有しました.
 9月に開催された平成23 年度土木学会全国大会年次講演会においては,本委員会主催で共通セッションを実施しました.この共通セッションでは「地下空間の多角的利用」をテーマに13編の発表がなされ,活発な意見交換がなされました.
 地下空間研究委員会の設置から既に16 年が経過しましたが,その間わが国の地下空間利用を取り巻く環境は大きく変わってきています.いわゆる「大深度法」の成立や地下街に関する規制の緩和などが進み,各種の都市問題解決のために地下空間が果たしてきた役割は非常に大きいといえます.
 一方,東日本大震災に関する仙台地区の地下空間調査によると,地下空間は構造的安全性が高いことが確認されました.しかしこのことについて一般市民の認知が不十分であり,それにより発生が予想される無用な避難やパニックへの対策と啓蒙の必要性,火災や浸水・水没に対する防止策と適切な避難誘導策と被害軽減策の必要性など,地下空間利用に際して対応すべき課題は未だ多い状況です.この度のシンポジウムのテーマでもある「安全・安心な社会の形成に向けて~巨大災害に対する地下空間の役割~」を通してこれらのことをさらに深く探求する必要があります.
 本委員会は,今後とも安全・安心・快適な地下空間づくりを目指すとともに,地下空間の有用性を説くべく,新たな視点で研究を進めてゆく所存でございます.皆様方におかれましても,これまで以上に委員会活動への積極的な参加とご支援を賜りますようよろしくお願いします.

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