親委員会H18年度活動報告

地下空間研究委員会
                              幹事長 入江 健二

                              

 本委員会は,平成6年度に土木学会に常設されて以来,地下空間利用における人間中心の視点に立ち,“地下空間学”の創造をめざす研究活動を行ってきた.その活動領域は,土木工学のみならず,都市計画,建築,法律,医学,心理学,福祉さらには芸術の分野にまで及んでいる.

 本委員会では「計画小委員会」「防災小委員会」「心理小委員会」「維持管理小委員会」の4つの小委員会と,毎年初に開催している地下空間シンポジウムおよび論文発表において,その企画運営と論文審査を行う「地下空間シンポジウム実行委員会」「論文・報告集編集小委員会」を設置している.その中で各々のテーマに基づき研究活動を精力的に行っているとともに,シンポジウムや土木学会年次講演会での研究討論会、共通セッションなどを通じて,広く委員会外の方々と論文発表ならびに意見交換や討論を行ってきている.また,地下に関連した災害,重大事件・事故には迅速に対応し,討論会の企画や報告書として成果の公表も行ってきたところである.

 本年度は昨年から開始した第四期の2年目となるが,上記の4小委員会による研究活動の更なる推進はもちろんのこと,新たに「普及小委員会」を設けて,地下空間利用の効果や有用性について一般の方々の認識を深めるための活動を強化した.

 土木学会年次講演会における研究討論会では,「安全・安心・快適な地下空間の構築とデザイン」をテーマに論文発表や意見交換がなされた.地下空間の防災対策ならびに高齢化社会の更なる進行をふまえて,地下空間をいっそう魅力あるものにするために,バリアフリーの充実やアメニティーの要素を取り入れたデザインの工夫について今後の方向性を議論したが,これは将来の地下空間利用の発展を見据えて本委員会が取り組む重要なテーマの一つと考えている.

 地下空間研究委員会の設置から11年が経過したが,その間わが国の地下空間利用を取り巻く環境は大きく変わってきた.いわゆる「大深度法」の成立や地下街に関する規制の緩和なども進んできた.また,話題となっている日本橋再生構想ではこれまでの事業整備スキームとは異なる新しい方式(Public-Private Partnership)による地下空間利用の可能性も示されている.

 一方,地震時における地下空間の構造的安全性が高いことについて一般市民の認知が不十分であり,それにより発生が予想される無用な避難やパニックへの対策と啓蒙の必要性,火災や浸水・水没に対する防止策と適切な避難誘導策と被害軽減策の必要性など、地下空間利用に際して対応すべき課題は未だ多い.

 本委員会は,今後とも安全・安心・快適な地下空間づくりを目指すとともに,地下空間の有用性を説くべく,新たな視点で研究を進めてゆく所存である.
 皆様方には,これまで以上に委員会活動への積極的なご参加とご支援をお願い申し上げる次第である.                                                                    

以上

                                       

 

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